検査値の判定が異なる時
「How to 健康管理」2000年7月号より
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受診者にとっては、健康診断の際に渡される結果の数値は大変気になるところです。なかには、○○さんと検査値が同じなのに判定が違う、この判定は間違いなのでは、と質問してくる方もあります。
しかし、同じ検査値でもほかの条件によって判定が変わってくることはあります。まず、ほかの検査値との兼ね合いで判定が変わる場合。たとえば、総コレステロール値が230mg/dl、中性脂肪値が100mg/dlと同じであっても、HDLコレステロール値が40mg/dlと80mg/dlの場合では判定が違ってきます。計算式*1を使ってLDLコレステロールを推定しますと、前者の例では170mg/dl、後者の例では130mg/dlと相当違ってきます。動脈硬化のリスク評価としてはLDLコレステロールのほうがより直接的ですから、この差は総コレステロール値の判定にも反映します。
次に、併存するほかのリスク因子によっても判定が変わってきます。やはり総コレステロール値を例にします。検査値が210mg/dlだったと仮定しますと、肥満、耐糖能異常、高血圧といったリスク因子が何もなければ正常と考えますが、これらのリスク因子があれば要注意ですし、狭心症や心筋梗塞の既往があれば薬物療法が考慮され得ます。それに応じて、判定も「異常なし」、「要経過観察」、「要受診」と変化していきます。
健康診断というと、機械的に検査の数値でもって受診者を輪切りにしているかのようなイメージがありますが、実際には同じ数値でも判定が変わり得ることにご注意ください。
(以上、「How to 健康管理」平成12年7月号初出、原文のまま)