不満・要望について(その1)
人間ドックについての質問集
はじめに
このコーナーは、読者、勤務先の受診者などからの人間ドックについてのQ&Aのうち、人間ドックについての不満・要望についての最初のものです。
質問リスト
- ドックの胃X線検査で、3年連続同じポリープで精密検査にされ、毎年胃カメラに回されます。しかし、胃カメラをするたびに、組織検査で悪性ではないし腫瘍でもないから、6ヶ月ごとに胃カメラをすればいいといわれます。精密検査を同じ病院で受けたのに、過去の経過や精密検査の結果は翌年の判定には考慮されないのでしょうか。また、どうせ精密検査になるのなら、こういう場合はじめから胃カメラは出来ないのでしょうか。(1997/9/19) →問1の答え
- 大腸の検査が便潜血反応だけでは不安なので、S状結腸内視鏡を併用している施設の一泊二日ドックを受診しました。しかし、肛門から60cmしか届かないと聞きました。大腸の残りの部分も見て欲しいので、大腸全体の内視鏡検査をドックでして欲しいのですが。(1997/9/20) →問2の答え
- 今年(平成9年)一泊人間ドックを受けたところ、去年窓口で払ったのは5000円だったのに、今年は4万3000円も請求されました。こんなに値上げされてはもう受けられません。(1997/9/20) →問3の答え
- 人間ドックで超音波断層検査を受けたところ、肝臓に何か出来ている可能性があるので、CTを撮ってもらった方が良いと言われました。ところが、同じ病院の内科を受診したのに、ドックでやったはずの血液検査や超音波断層検査を含めて、全部の検査をやり直しされました。ドックのデータが送られているにもかかわらずです。これは検査費用の無駄ではないのですか? (1997/9/21) →問4の答え
- 私の利用している人間ドックでは、胃の検査をX線でしかやってくれません。内視鏡検査ができないなんて、今時遅れていませんか。(1997/9/21) →問5の答え
- ドックで、自分の職業を根掘り葉掘り聞かれました。日本では職業選択の自由が保証されているはずであり、プライバシーの侵害だと思います。どんな職業につこうと、私の勝手だと思うのですが。「会社員」や「公務員」では駄目だという権利は人間ドックには無いはずです。(1997/11/5) →問6の答え
- 二次検査は健康保険でやってください、とのことでしたので、その健診センターの系列病院を受診しました。ところが、受診した日には診察や病歴を二度も聞かれ、血液検査だけやってすぐには超音波断層検査が出来ませんでした。せっかく食事を抜いて来たのに、無駄足です。また来るためにもう休みは取れません。連絡が悪い、体制の欠陥ではないのですか。そんな顧客を大事にしない施設はつぶれてしまった方がいいと思います。(1998/2/8) →問7の答え
- 人間ドックを受診中に血圧が250/150mmHgだったということで即座に内科に連れて行かれ、降圧剤の投与を受けて血圧は落ち着いたため、入院とならずに薬を出されました。それは仕方ないとして、なぜ別途9,800円も請求するのですか? そんなにとるなんて話は聞いていません。(1998/8/24) →問8の答え
- よく医者は禁酒・禁煙をうるさく言いますが、大酒家で禁酒したとたんに肝臓癌が出たとか、ヘビースモーカーが禁煙したとたんに肺癌が見つかったと言う話をよく聞きます。自分はだから酒も煙草も止めるつもりありませんし、ドックで禁酒・禁煙を言う必要はないと思います。(1999/2/14) →問9の答え
- 人間ドックで胃の検査に所見があるということで、胃カメラを飲むことになりました。事前にC型肝炎の有無を知りたいとして、採血のため内科に回されました。ところが、10分で済む採血に3時間も待たされました。もうその病院には二度と行きません。(1999/4/7) →問10の答え
Q&A
1番目の質問
問い
ドックの胃X線検査で、3年連続同じポリープで精密検査にされ、毎年胃カメラに回されます。しかし、胃カメラをするたびに、組織検査で悪性ではないし腫瘍でもないから、6ヶ月ごとに胃カメラをすればいいといわれます。精密検査を同じ病院で受けたのに、過去の経過や精密検査の結果は翌年の判定には考慮されないのでしょうか。また、どうせ精密検査になるのなら、こういう場合はじめから胃カメラは出来ないのでしょうか。
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答え
この質問は、逐年受診者の扱いについての、大変重要な問題を含んでいます。この質問は、主に三つの点での不満を反映したものと思います。
- 人間ドックと精密検査が同じ病院で行われているのに、結果がフィードバックされていない
- 前年の結果によらず、常に同じ判定基準で判定がなされている
- 受診者の状況に関わらず、同じ検査を漫然と行っている
第一の点ですが、結構こういう例はあるようです。特に、健康診断部門が一次検査しか行わず、二次検査以降は臨床部門で保険診療として行っている場合、どうしても病歴管理はばらばらになってしまいます。同じ医療法人の中でも、実態は別の病院でやったのと同じ、ということもあります。ですから、次の年に、受診者に、「あの時の精密検査の結果はどうでしたか」などと聞くようなことになってしまいがちです。
ですが、本当はこれではいけません。しっかりした良心的な施設では、ある一定の時期に、受診者が精密検査を受けたかどうか、また受けた場合その結果を電話で問い合わせたり、診療部門のカルテを健診部門でも点検したりして、受診者の事後の状態を把握する様努めています。
また、系列外の施設で二次検査を受ける受診者の把握には、紹介先の医療機関からのしっかりとした返信が欠かせませんが、まともな返信をよこさない施設には受診者を紹介しない、という、かなり強硬な締め付けを行って、紹介先からの返信率70%を達成した健診機関を知っています。(たかが70%と言わないでください。これは本当にすごいことなのです。)もっとも、これは地域で絶対的な力を持っていてこそ出来ることですから、そう真似の出来ることではありません。
自施設においても、受診者の追跡調査には努力しておりますが、大腸ポリープを例に取ると、追跡調査可能だったのは、全体の55%でした。精密検査の結果のフィードバックは、言うは易く、行うは難し、というものなのです。
次に、二番目の点ですが、これは難しい点を含んでいます。ポリープに限らず、潰瘍なども含めた病変一般について考えた場合、悪性転化の心配がある病変、一部が悪性かもしれないが精密検査でその部分が採取漏れになっているかもしれない病変など、毎年同じように見えても、その度に精密検査すべき病変というのは存在します。ですから、精密検査が済んでいても、あえてもう一度、もう二度、もう三度、という指示をすることはあります。
実際、早期胃癌を疑った病変で、発見後4年半、9回目の検査でようやく癌組織を証明し、内視鏡的粘膜切除となった例も経験しております。(ところで、これを放っておいたらどうなるのでしょう。「患者よ、がんと戦うな」の近藤先生の言う「がんもどき」と言われてしまいそうな例ですが、だからと言って、何もしないわけにも行かないでしょう。)
しかし、完全に状態が固定していると分かっているのに、数値的基準を機械的に当てはめ、毎年精密検査とするのは問題があります。この場合には、同じ検査結果でも、判定が変わるのがむしろ自然です。
最後に、受診者の状況によらず、全員に同じ検査をするのはおかしい、との批判があります。ただ、人間ドックの基本思想に、
- 自覚症状がなく、既知の病変も無い人に潜在する健康上の問題を発見するのが目的
- 症状や問題点がすでにある人は、直接診療部門へ行くべきである
というものがありますので、どうしても、「自分は大丈夫」と思っている人のためのスクリーニング、という発想で検査項目や検査方法が画一化されています。
しかし、現実には、専門化された医療の中で自分の守備範囲しかみてもらえないと不満の患者や、保険診療では診療中の病気以外の検査はできないからとドック受診を勧める主治医など、すでに患者のレベルにある人もドックを利用することがあります。中には、ドックが主治医、という受診者さえいます。人間ドックの受診者の目的が多様化し、逐年受診者も増加している現状では、やはり受診者の状況に合わせて検査も選択できるのが望ましく、現実もその方向に動いているようです。
何れにしても、冒頭のような質問は、大変重要な問題を突いてきていることは確かであり、しばしばクレームとなるものでもあります。
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追記
健診結果が理想的な形で共有され、二次検査の結果も的確にフィードバックされることで、質問のようなクレームが減るのは間違いありません。しかし、健診機関と医療機関で診断医が別である以上、見解の相違により二次検査の結果が分かっていても敢えて精密検査を出し続けるような例が生じることは避けられません。画像診断ではどうしても起こりうることです。
また、検査の特性の差によってⅩ線造影ではどう見ても悪性だが内視鏡検査ではそうでもない、という病変が出る場合があります。こういう病変の場合、本当に大丈夫か、という疑心暗鬼が生じて二次検査の指示が繰り返されることもあります。これを避けるのに次回の人間ドックでは初めから内視鏡検査を受けるというのは有効な考え方です。多くの施設ではこうした要望に対応できるようになっていますので、申し込みの際に「胃の検査は内視鏡で」と施設側に伝えてみてください。
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2番目の質問
問い
大腸の検査が便潜血反応だけでは不安なので、S状結腸内視鏡を併用している施設の一泊二日ドックを受診しました。しかし、肛門から60cmしか届かないと聞きました。大腸の残りの部分も見て欲しいので、大腸全体の内視鏡検査をドックでして欲しいのですが。
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答え
同じような要望が、筆者の下には複数届いています。一つの方法は、大腸の検査だけ、専門ドックを受けることです。また、施設によっては、一泊二日の総合ドックでも、大腸全体の内視鏡を受けられます。しかし、これが全国に普及し、一般的となるのは難しいと思います。
大腸全体の内視鏡をやるためには、S状結腸内視鏡の場合よりも、さらに徹底的な腸管内容(つまり便です)の清掃が必要です。この目的のために、検査前日は流動食同然の食事にした上に、検査当日にも、ポリエチレングリコール(不凍液に使われています)や界面活性剤(洗剤に使われているあれです)を2リットル飲ませることになります。また、検査時間も、S状結腸内視鏡と違い、大腸が長くループしているような人では、一人30分以上かかることもあります。おそらく、大腸の検査だけで半日つぶす覚悟が必要です。これは私見ですが、総合ドックで大腸全体の内視鏡をやるためには、二泊三日以上の日程が必要でしょう。
S状結腸内視鏡と免疫学的便潜血反応の組み合わせは妥協的ではありますが、大腸がんの70%が直腸かS状結腸に出来ること、また、現在非常に増えているのはS状結腸がんであることを考えると、十分有効性があるのではないでしょうか。学会報告でも、S状結腸内視鏡と免疫学的便潜血反応の組み合わせは、免疫学的便潜血反応単独に比べ、比較的良い成績を上げています。
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3番目の質問
問い
今年(平成9年)一泊人間ドックを受けたところ、去年窓口で払ったのは5000円だったのに、今年は4万3000円も請求されました。こんなに値上げされてはもう受けられません。
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答え
現在、健康保険組合の財政悪化を背景に、契約金額を上げられないでいるドックがほとんどであり、値上げをするようなところはほとんどないと思います。ドックを行っている施設の収入は増えていないのに、窓口での請求金額が前年より上がっているのは、健康保険組合の補助率が下がった場合がほとんどです。それにしても、質問の例は極端すぎます。
おそらく、所属健康保険組合の補助の仕方が、差額精算からキャッシュバック方式に変わったのでしょう。健康保険組合が如何に多額の補助をしているかをアピールするため、一旦全額を受診者に払わせておき、実際受診した後で補助金を支給する、と表明した健康保険組合がありました。受診者を安いコース(例えば一泊ではなく一日ドック)に誘導する狙いもあったようです。何れにしても、施設の収入は増えていないことに注意してください。
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4番目の質問
問い
人間ドックで超音波断層検査を受けたところ、肝臓に何か出来ている可能性があるので、CTを撮ってもらった方が良いと言われました。ところが、同じ病院の内科を受診したのに、ドックでやったはずの血液検査や超音波断層検査を含めて、全部の検査をやり直しされました。ドックのデータが送られているにもかかわらずです。これは検査費用の無駄ではないのですか?
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答え
これも案外多い苦情(特に健保組合から来る)の一つです。ですが、これにもやむを得ない場合があります。
- 内科を受診するまでの時間経過が長く、ドックのデータが古くなった場合
- ドックから送られてきた画像の条件が悪く、診断上やり直しが必要な場合
- ドックから送られてきた画像のフォーマットが診療側と適合せず、このままでは使えない場合
- ドック側の診断に疑問があるが、検査をやり直さないと決められない場合
また、超音波断層検査の場合、検査を施行した技師や医師本人には結果が分かりやすいのですが、探触子がフリーハンドなため、他人が記録画像を見ただけではわかりにくいと言う欠点があります。このため、二度目に診察した医師にとって、自分で検査をやり直さないと状況をつかみにくいことがあります。
これらの理由で、ドックで済んでいる検査でも、必要に応じてやり直す場合があります。
しかし、同じ検査を何回も受けさせられる方にとっては、たまったものではありません。不要な検査の重複は受診者の利益を損ないます。このような批判を招く状態の解消には、
- すべての臨床データは各科・各部門・各施設の共有資源である、との認識
- どの科で検査しても、同じ状態は同じ結果で出てくる「再現性」の確立
- どの科で検査しても、共通に使えるフォーマットの確立
- 健診部門も、信用できる質の高いデータを提供すること
これらにより、不必要な再検査を減らすしか方法がないと考えます。もちろん、再検査すべき時にしないのは、大変困ったことです。あくまでも、「検査のための検査、やり直すことが患者の利益にならず、負担を与えるだけの検査」を減らすのであって、必要な検査は必要なのです。
なお、いわゆる「検査漬け」を、「病院がそれで儲けようとしている」と非難する人がいますが、今の保険制度では、検査が必要以上に多いと査定を食らったり、保険点数の上限に当たったりして収入が経費に及ばなくなり、かえって病院の赤字の原因になるため、昔のような野放図な検査の出し方は出来ないはずです(必要な検査さえ出せないことが多いのは何とかならないでしょうか)。
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5番目の質問
問い
私の利用している人間ドックでは、胃の検査をX線でしかやってくれません。内視鏡検査ができないなんて、今時遅れていませんか。
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答え
筆者の施設では2000年05月20日より上部消化管内視鏡検査の受付を行い、2013年はおよそ2100人に対し上部消化管内視鏡検査を行いましたが、現在なお胃の検査をX線でしかやらない施設は多いようです。内視鏡医が不足しているのと、健診施設にとって人件費、設備の改修などのハードルは決して低くないようです。
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(改訂)
6番目の質問
問い
ドックで、自分の職業を根掘り葉掘り聞かれました。日本では職業選択の自由が保証されているはずであり、プライバシーの侵害だと思います。どんな職業につこうと、私の勝手だと思うのですが。「会社員」や「公務員」では駄目だという権利は人間ドックには無いはずです。
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答え
健康状態と職業とは極めて深い関係があります。どんな仕事を、どんな環境で、どんなやり方でやっているのかが、時として健康上重大な意味を持ってくるのです。意味も無く、仕事の内容を聞いているのではありません。ですから、仕事の内容を詳しく尋ねるのは、その人の健康障害が職業上のものかもしれない、そんな疑いを持った場合です。また、「会社員」や「公務員」というのは職業ではなく身分あるいは雇用形態です。システムエンジニアなのか、経理屋さんなのか、庭師なのか、そう言った職種がここでは問題になります。
もっとも、人間ドックでは、その人の職場の事情は分かりませんので、具体的な勧告は難しいことがほとんどです(産業医のような訳にはなかなかいきません)。ですが、職業上の健康障害かもしれない、そんな疑いを持った場合には、最低でも産業医に連絡する位のことはしないといけません。
ですが、ある健康障害が職業性かどうかの判断は、たいていすごく難しいのです。心理的な影響、職業性でない私病の可能性、いろいろ考えなくてはいけません。そして、有害因子への曝露の有無が決定的な判断材料になりますが、それには職場の状況を聞かないと全く判断できません。
ですから、興味本位で聞いた訳ではないということ、そして、もし職業性の健康障害だった場合、しばしば産業医との連携を取って問題解決を図る必要があるため、職業性の健康障害かどうかの判断が必要であり、そのために時には突っ込んだ質問になってしまうことがあることをご理解ください。
なお、余談ですが、職業を聞かれた場合、スペシャリスト(例えばSEとかプログラマーなど)、専門職(弁護士、公認会計士、税理士、医師など)、技能職(大工とか板前など)といった方の場合、どう答えていいかあまり困ることはないでしょう。職業、職種、仕事内容の対応がはっきりしているからです。ですが、専門分野を持たないホワイトカラーの場合が一番判断に迷います。自分でも職業が分からない、そんな人も多いようです。その場合は、具体的な仕事の状況を教えてくだされば、健康相談や指導の際、大変参考になります。よろしくお願いいたします。
なお、知り得た情報について、そのもとになった個人を特定または推定できる形で漏洩すると、犯罪になりますし、プロフェッショナルとしてはしてはならないことです。そのようなことはいたしません。このサイトでも、その恐れがあると思われる記事はさっそく削除または訂正いたしますので、問題があった場合にはご指摘ください。
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7番目の質問
問い
二次検査は健康保険でやってください、とのことでしたので、その健診センターの系列病院を受診しました。ところが、受診した日には診察や病歴を二度も聞かれ、血液検査だけやってすぐには超音波断層検査が出来ませんでした。せっかく食事を抜いて来たのに、無駄足です。また来るためにもう休みは取れません。連絡が悪い、体制の欠陥ではないのですか。そんな顧客を大事にしない施設はつぶれてしまった方がいいと思います。
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答え
一次検査で異常が出た場合、次の二次検査を健康診断で出来る場合と、保険診療でやる場合が出てきます。どこの施設でも、健診として二次検査をする場合には、予約上の問題が出にくいのですが、保険診療の場合、系列病院とは言っても、別の診療科に頼むことになります。担当医も交代することがほとんどです。病院側には病院側の事情もあり、救急患者との兼ね合いもあって、なかなかドックの受診者最優先とはいきません。
ですが、系列病院で受けるからには、あらかじめ検査予定も立てて、効率的に処理して欲しい、との要望はもっともです。施設によっては、健診センターも保険医療機関の告示を受け、人間ドックの担当医がそのまま保険診療も担当するようにしているところもあります。ドックの結果が出た時点で保険診療を開始し、検査予約も済ませてしまうようです。頭書のような苦情を避けるには、これが一番スムースでしょう。
本件は健診センターが病院と独立している施設共通の問題点と思います。申しわけありませんが、このような問題を皆無にすることは難しく、今後もある程度起きる可能性があります。出来るだけの改善策を検討いたします。
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8番目の質問
問い
人間ドックを受診中に血圧が250/150mmHgだったということで即座に内科に連れて行かれ、降圧剤の投与を受けて血圧は落ち着いたため、入院とならずに薬を出されました。それは仕方ないとして、なぜ別途9,800円も請求するのですか? そんなにとるなんて話は聞いていません。
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答え
250/150mmHgの高血圧なら、即座に治療が必要です。ですから、人間ドックを中断して内科に連れて行かれたこと自体は仕方ないでしょう。ただ、調べてみたところ、受診者は遠隔地からドックのために来たつもりであり、通院は地元で、との意向を持っていたようです。内科で出した検査結果も聞きに来ることは出来ないほど遠くから来ていたようです。その個人的事情を無視して、内科の方で24時間心電図などを出してしまったようです。入院とせずに帰宅させた後はもう来院しない人ならば、応急処置と当座数日間の投薬のみとし、あとは受診者の地元の病院や診療所に任せるべきでした。結局、診療科の方でもう少し患者(受診者)の話を聞くべきだったようです。
この苦情自体は診療科の方にもう少し配慮があれば良かったと言えるのですが、一般論としては、受診中に即座に治療を要する病気が出たときの事を考えると、通院しきれないほど遠くの施設を受けるのは考えものです。
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9番目の質問
問い
よく医者は禁酒・禁煙をうるさく言いますが、大酒家で禁酒したとたんに肝臓癌が出たとか、ヘビースモーカーが禁煙したとたんに肺癌が見つかったと言う話をよく聞きます。自分はだから酒も煙草も止めるつもりありませんし、ドックで禁酒・禁煙を言う必要はないと思います。
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答え
どんなに無茶な生活習慣でも、あるいはどんなに注意して生活を改めても、その効果が出るのにはそれなりに時間がかかってしまいます。特に、癌の場合は最低5年、たいていは10年から15年以上の積み重ねが効いて来ます。その人の場合は、時すでに遅かったのではないでしょうか。ですから、一見逆に見えるようなことが起きたのでしょう。少なくとも、大酒飲んだ方が良いとか、禁煙が無意味だと言うようなことはありません。個々の事例を取り上げて、酒やタバコにしがみつこうと言うのは賢明ではありません。
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10番目の質問
問い
人間ドックで胃の検査に所見があるということで、胃カメラを飲むことになりました。事前にC型肝炎の有無を知りたいとして、採血のため内科に回されました。ところが、10分で済む採血に3時間も待たされました。もうその病院には二度と行きません。
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答え
患者の待ち時間の問題は、何処の病院でも深刻な問題です。根本的には薄利多売を前提とした保険診療全体の問題ですが、質問者の不満はどうも、待ち時間そのものよりも、ドックを受診したのに一般の患者と同じ扱いをされ、一般の患者と同じだけ待たされたことに対するものだったようです。
ドックの受診者も、二次検査などで保険診療になってしまえば、レセプトが発生し、患者としての扱いを受けることになります。その時に、一般の患者に対して特別扱いをするかどうかの考え方は病院によって差があります。
一般の患者にしてみれば、一見健康そうな人が腹が痛くて苦しんでいる自分より優先されるのは変だ、と思うでしょうし、ドックから来た人は、ドックに高い金を払って受診したのに一般の患者と同じ扱いをされるならよその病院に行くのだった、と言う事になるのでしょう。なにやら、社会主義的原理と資本主義的原理の衝突のような気もしますが。
この問題に対し、診療も含めてメンバーシップ制をとる、という形で明確な解答を出しているところもあります。また、検診の比重の高い施設では、二次検査部門を独立させているところもあります。ですが、病院併設の施設では、特設外来を作って受付窓口をバイパスさせるのが精一杯でしょう。当方でも、ようやくドックの患者を出来るだけ待たせないための対策を取り始めたところです。
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