人間ドックについて

検査のグループ分け

「How to 健康管理」2000年6月号より

本文

健診の結果表では、しばしば各検査を器官系ごとに分けて表示します。たとえば、GOT・GPT・γ-GTP・ALP・LDHといった検査は肝機能検査として表示します。そのため、受診者は異常値が出た場合には肝臓が悪いと考え、異常値がなければ肝臓は大丈夫と考えてしまいます。

筆者の施設では、事業所の健診でGOTとLDHが高く、「肝臓が悪いのでは」と心配してドックに来た人がいました。診察してみると脚の下のほうに古い内出血の所見がありました。話を聞くと、当時階段から転落して打撲と捻挫がひどかったそうです。ドックでは検査の数値は正常でした。最初の健診の時点では筋肉の炎症でGOTとLDHが高かったと考えました。この酵素は肝機能検査のなかに入ってはいますが、筋肉組織にも多く含まれ、筋肉の炎症で数値が上がることがあります。

逆に、肝機能検査の欄に異常がなくても肝臓が悪い場合があります。代償性肝硬変や進行した慢性肝炎なのに炎症の活動性が低い場合などにみられます。肝炎ウイルスマーカーが末測定だったり、結果が血清学的検査の欄に書かれていたりすると、肝機能検査で異常がないために異常を見過ごしかねません。また、肝機能検査に異常がなくても、腹部超音波断層検査で進行した慢性肝炎が疑われることもありますが、肝臓の異常=肝機能検査の異常と思い込むとこの所見を軽視しかねません。

今回は肝機能検査を例にして、検査項目の枠にとらわれると誤解や見逃しが生じることがある、という話でした。

(以上、「How to 健康管理」平成12年6月号初出、原文のまま)