健診結果を縦に見る
「How to 健康管理」2000年10月号より
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健康診断における判定は通常、受診した時点での測定値を基準範囲と照らし合わせ、この範囲から隔たるごとに異常性が強くなると仮定して下されます。一時点での測定値で受診者を輪切りにするような形になり、横断的な見方と言ってもよいでしょう。
これに対し、測定値の時間的な変化によって判断する見方もあります。先ほどの横断的な見方に対し、縦断的な見方と言えます。連続した2回の検査値がともに基準範囲のなかにある場合でも、縦断的な見方では解釈が変わって来ることがあります。
Aさんは1年前の定期健康診断で血色素量(男性の基準範囲13.5~18.0g/dl)が17.0g/dlでした。今回は13.7g/dlと基準範囲内でしたが、精密検査を指示し病院を受診。便潜血陽性のため注腸造影を行い、大腸ポリープが発見され切除を行いました。
Bさんはリウマチで整形外科に通院中でした。1年前までは白血球数(基準範囲3500~8000)が6000前後でした。半年前は4000とやはり基準範囲内でした。この時点では特に主治医から指示はありませんでした。しかし、最後の検査の半年後に肺炎を起こし入院。白血病が見つかりました。
このような例はそう滅多にはありませんが、2例とも検査結果は基準範囲のなかでの変動でしたが、縦断的な見方、すなわち時間軸上の変化という観点から見ると、ともにその変化は大きく、「異常なし」どころか「要精密検査」に相当するものと解釈しなければならなかった例です。横断的なものの見方になりがちな健康診断ですが、縦断的な見方も忘れてはならないところです。
(以上、「How to 健康管理」平成12年10月号初出、原文のまま)