人間ドックについて

「異常なし」の落とし穴

「How to 健康管理」2000年5月号より

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健康診断の結果、全項目「異常なし」だった場合、一見健康度は最高のような気がします。しかし、本当にそうでしょうか。

まず、今無茶な生活をしていても、それが悪影響を及ぼすには時間がかかります。一例を挙げるなら、喫煙率が滅った国でも、肺がんの死亡率が滅るのは15年程遅れます。逆に見れば、喫煙習慣が肺がんとなって出るには15年程かかるわけです。この意味で、「異常なし」というのはまだ病変が出ていないだけかもしれません。特に20、30代で全項目「異常なし」という場合、検査項目による判定よりも、喫煙の状況といった生活習慣の評価のほうが将来予測のうえでは重要です。

また、「異常なし」という判定は、決して無茶をしてよいというお墨付きではありません。しかし、人によっては自分の健康を過信して無理を重ねてしまいます。ある年、人間ドックで血圧も心電図も「異常なし」と判定された人が、次のドックで250/150と著しい高血圧でした。話を間くと毎日17時間働いていた、といった極端な例を時々目にします。

たとえ病気があった場合でも、それが必ず検査の異常として現れるとは限りません。健康診断でチェックできない病気もあります。筆者も受診者のわずかな眼球運動の異常から危ういところで脳腫瘍を見つけたことがありますが、普通はこのようなチェックはしません。

また、代償性肝硬変といって肝臓に最低限の機能が残っている場合、肝硬変でも肝機能検査に異常が何も出ないこともあります。全項目「異常なし」であってもご注意ください。

(以上、「How to 健康管理」平成12年5月号初出、原文のまま)