混合診療に利点も
解禁にそれなりのメリットあり
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混合診療というのは分かりにくい言葉である上に、明確な定義はないとされておりますが、通常は「保険診療と保険外診療の併用」とされています。同じ医療機関で同時に保険診療と保険外診療を併用することは保険医療機関及び保険医療養担当規則第18条により禁止されており、もしこれを行った場合は、次のようなことになってしまいます。
その保険医療機関での一連の治療費について公的保険診療で認可された部分も含めて、医療機関よりの請求に対して保健組合は支払義務を免除される(医療機関の全額負担となるが、患者に支払義務はない)。そのため、医療機関は私費診療(自費診療、保険給付外診療)として当初より受付て自由診療を行い、医療費は全て患者負担とさせる。
(Wikipediaより引用)
つまり、保険外併用療養費制度などによる例外はあるものの、混合診療を行った場合は保険診療部分も全額自己負担となってしまうという法解釈が定着しています。最高裁による判例もあることから、これは当分は覆らないものと考えて良いでしょう。
これを回避するには、保険診療部分と保険外診療部分を別の医療機関で行うなどして、「診療行為の分断」を行うということになります。具体的な例としては、
- 保険診療の範囲内の治療は入院中の医療機関で行い、(保険外併用療養費制度の評価療養にも該当しないような)未承認薬は別の医療機関に通って投与してもらう
- 健康診断で内視鏡を行ってポリープが見つかっても、その場では切除せずに内視鏡を終えてしまい、後日改めてポリープ切除*1を行う
といった場合が考えられます。
健康診断で問題になるのは、人間ドック等の健康診断は例え健康保険組合の事業として行われた場合であっても自由診療扱いであるため、健診機関では受診当日は保険診療が行えなくなってしまう可能性があることです。二次検査であっても、健保組合全額負担でスタートすると、やはり自由診療扱いになるので同様の問題が出てしまいます。二次検査を保険診療扱いでスタートした場合、内視鏡検査で見つけたポリープをその場で切除して治療と診断を一度にやってしまうことは珍しくありませんが、健保組合全額負担扱いだと健保組合の費用負担は検査に係わる部分のみであり、そこからはみ出したポリープ切除の料金は全額自己負担になってしまうため、ポリープ切除は後日に回して再度保険診療扱いで行うといった妙なことになりかねません(治療的ポリープ切除でなく同時生検なら事務通達で認められているので、生検だけ保険診療扱いに別途請求出来るのですが……)。
この例からも分かるとおり、場合によっては混合診療を解禁してしまった方が無駄な検査を避けられてスマートです。混合診療禁止の理由として、混合診療解禁が保険診療の縮小改変につながるという懸念が挙げられていますが、本来は保険診療の範囲設定と混合診療の解禁は別の問題であり、健康診断の場では混合診療の解禁にもそれなりのメリットがありそうです。