楓葉作曲講座(第2回)
Ⅱ、Ⅵの和音と和声外音の使用例(続)
はじめに
このページでは講座の第2回として、Ⅱ、Ⅵの和音と和声外音の使用例を解説します。
主要3和音以外の主な和音
- 音階上の第2音・第4音・第6音からなる3和音であるⅡの和音
- 音階上の第3音・第5音・第7音からなる3和音であるⅢの和音
- 音階上の第6音・第1音・第3音からなる3和音であるⅥの和音
- 音階上の第7音・第2音・第4音からなる3和音であるⅦの和音
このうち、ⅢとⅦの和音は余り使われません。使いどころが難しいのです。特にⅦの和音は短三度を二つ積み上げて出来る減三和音で、ちょっと特殊な響きがします。しかし、ⅡとⅥの和音は使用頻度が高いので、早い段階で取り上げておきます。
さて、Ⅰ、Ⅱ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵの和音だけでも5種類になってしまいました。これらの和音のつなぎ方を全部丸暗記するのも効率が良くありません。しかし、自然な形での和音の連結にはある程度の規則性がありますので、覚えることはそれほど多くありません。
- Ⅰの和音はどの和音にも行くことが出来る。
- 根音が二度上がる、三度下がる、四度上がる場合は自然な進行に聴こえやすい。
- ⅣからⅠへの進行(変終止)、ⅤからⅠへの進行(全終止)、ⅤからⅥへの進行(偽終止)は一段落したあと曲がとりあえず落ち着いた感じを与える。Ⅴへの進行(半終止)は一段落したあと曲が続く感じを強く与える。
- 一旦Ⅰの和音に戻って落ち着いたら、その後は何でもあり。
- Ⅲ、Ⅶの和音へはめったに進行しない。
このような規則性がありますので、
- Ⅰの和音の次はⅡ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵの和音が続きやすい。
- Ⅱの和音の次はⅤの和音が続きやすい。
- Ⅳの和音の次はⅠ、Ⅱ、Ⅴの和音が続きやすい。
- Ⅴの和音の次はⅠ、時にⅥの和音が続きやすい。
- Ⅵの和音の次はⅡ、Ⅳの和音が続きやすい。
という傾向があります。
したがって、
- Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ
- Ⅰ-Ⅵ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ
- Ⅰ-Ⅳ-Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ
- Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ
- Ⅰ-Ⅳ-Ⅰ-Ⅴ-Ⅰ
- Ⅰ-Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ
- Ⅰ-Ⅴ-Ⅰ
といった流れが定番として使われます。図1はその一例です。
譜例の前半のようなⅠ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴといった流れは定番中の定番として知られています。ハ長調のⅥ-Ⅱはともに短三度の上に長三度を積み上げた短三和音で、それぞれイ短調とニ短調の主和音です。主要三和音のⅠ、Ⅳ、Ⅴは長調の場合すべて長三度の上に短三度を積み上げた長三和音です。これに短三和音であるⅡ、Ⅵが入ることで、和音進行が変化に富んだものになります。長調のⅥ-Ⅱの流れは平行短調のⅠ-Ⅳと読み替えができることにも注意してください。もし読み替えた短調のまま和音進行してしまえば、とりもなおさず転調したことになってしまいます。
和声外音の使い方(続)
前回紹介した他にも和声外音(以下外音)の使い方の定石はいろいろあります。図2の譜例の▲印のように、前の小節の和声内音(以下内音)を次の小節に持ち越すことで、次の小節では外音となす使い方があります。▲印の次の音は二度動く(多くは二度下がる)ことで内音に至ります。これを解決といいます。なお、譜例で※印は既出の使い方をした外音であることを示します。
さらに、図3の譜例の▲印のように、次の小節の内音を先取りした外音の使い方もあります。
また、図4の譜例の▲印のように、小節の先頭でいきなり外音をぶつけるやり方もあります。この場合も次の音は二度動いて内音に移行するのが定石です。
実際には、今まで述べたような外音の使用法はどれか一つを使うものではなく、好きなところで任意の方法を使えばよいのです。図5の譜例で数字で示した箇所ではそれぞれ異なる外音の使い方をしています。
そこで宿題です。図6は和音進行とバスだけの書かれた譜面です。
課題:内音と外音を自由に使って、譜面上空白となっている旋律を作りなさい。
とうとう宿題が出ました。キーボードでもmidiの打ち込みでも何でもいいので、作った旋律は音を出してみて確かめてください。
次回は属7の和音と旋律に簡単な伴奏をつける方法についてを予定しています。