唐突ですが、ちょっといつもとは毛色の違う話をします。
化学物質を扱う時、手袋で防護することが良くありますが、
「手が薬品で濡れるわけでもない。手袋も痛んでいない。それでも手荒れする、不思議だ。」
という話を良く聞きます。
こういう場合は化学物質が透過していると考えてよいと思います。見た目には濡れていなくても、化学物質が拡散して通り抜けていることがあり、こうした現象を透過といいます。
手元に住友アンセル社提供の資料がありますが、具体例としてホルムアルデヒドの場合をみますと、同じような手袋でも、
- ニトリルゴム0.54mm厚
- 対劣化性:非常に良い(Excellent)
- 透過時間:360分を超え
- 透過率*1:非常に良い(Excellent)(透過率が非常に低い:1時間当り0〜0.5滴)
- 天然ゴム0.48mm厚
- 対劣化性:非常に良い(Excellent)
- 透過時間:10分
- 透過率:良い(Good)(透過率が低い:1時間当り6〜50滴)
となっています。 ホルマリン漬けの病理組織標本を長時間扱うような状況を考えると、天然ゴム製の手袋は一見大丈夫なようでも注意が必要と言うことになります。すなわち、ゴム手袋では手荒れするかもしれない、ということになります。見た目濡れなければ良いと言うものではない、ということです。
内視鏡の消毒などでグルタールアルデヒドを使うことがありますが、医療機関では化学工場のような産業医学的配慮は払われていないことが多く、意外と不適切な手袋を使っていることがあると思いますが、実態はどうなのでしょうか。ただし、前記の資料によれば、25%グルタールアルデヒドの場合、0.48mm厚の天然ゴム製手袋の透過時間が210分とのことですから、分厚ければゴム手袋で大丈夫なようです。
なお、グルタールアルデヒドについては、最近医療機関にて健康障害が出ていることから、厚生労働省労働基準局より「医療機関におけるグルタルアルデヒドによる労働者の健康障害防止について」という通達が平成17年2月24日に出ております。
*1 透過率:元資料の表現に従い、透過率が少ない順に非常に良い(Excellent)、とても良い(Very Good)、良い(Good)、普通(Fair)、悪い(Poor)、勧められないとなっており、透過率が少ない方が良い評価となります。