小泉内閣の外交は案外合理的だと思う

小泉内閣の外交を非難する向きが一部にあるが、私自身はなかなか合理的で良いと思っている。ここで小泉外交について具体的に評価する前に、極端なハト派的戦略と極端なタカ派的戦略が何をもたらすかを考えてみたい。

まず絶対的平和主義によるハト派的戦略であるが、これは進化的に安定ではないそうである。確かに、平和主義者の集まりの中に戦争主義者を放り込めば、無抵抗な平和主義者はなす術がないため、あっという間に平和主義者は淘汰されてしまう。これと同じことが起きたのが第一次大戦後のヨーロッパであろう。ヒットラーがヨーロッパを席巻して行った過程は、平和主義者だけで集まることの限界を良く示していると思う。

これとは逆の絶対的戦争主義によるタカ派的戦略はどうか。今度は進化的には安定になるが、恐ろしくパフォーマンスが悪くなる。すべての国が自分自身以外は敵だなどとやっていたら、存続は出来てもいつまでも貧しいままになってしまう。

一番パフォーマンスが良いのは、初期状態で友好的にしておいてあとは相手の出方に合わせる(友好的に接してくる相手には友好的に、対決してくる相手には対決姿勢をとる)、と言う戦略なのだそうである。個々の国とは引き分けか僅かな負けになるが、全体としては1位になれるのだそうだ。

理論的な証明は私には出来ないが、確かに3番目の戦略は大人の対応と言うもののエッセンスである。身近な体験からも、大人になるということはこのような対応を身につけることと言える。

その目で小泉内閣の外交を見ていくと、親日的な国にはより利益が上がるように計らって友好関係を拡大し、反日的な国には毅然とした対応をとっている。例えばインドネシアやタイとはFTAを締結し、東アジア共同体構想ではインド、オーストラリア、ニュージーランドを加盟させようとしている。中韓に対する対応は言うに及ばずである。実に合理的な外交である。

小泉内閣がタカ派なのではなく、普通に最適解に従った外交を目指しているように見えるのは、贔屓目に見すぎであろうか。私は贔屓の引き倒しではないと思う。