「現代音楽」を前衛音楽や実験音楽でなく同時代音楽として捉えるならば、この「グループNEXT」もまた「現代音楽」の作曲家集団ということができると思います。もっとも、「現代音楽」という言葉には妙な手垢が付いてしまったので、彼らはそう呼ばれることを好まないでしょうが……。
いきなり何の事やら分かりにくい前置きが入ってしまいましたが、(同時代音楽という意味での)「現代音楽」の作曲家集団「グループNEXT」の第9回作品展が2007年6月13日にすみだトリフォニーホールの小ホールで行われました。3年ぶりに足を運んだのですが、今回の作品展は非常に短く感じました。19時から始まって20時38分の終演ですから、決して長くない演奏会ですが、それにしても短時間に感じられました。
その理由ですが、私自身がこういう音楽を聴くのに慣れてきたということもあるでしょう。しかし、時代の流れとして聴衆をより意識する方向へ変わってきたような風向きの変化が出てきて、より聴衆が入りやすい音楽に変わってきた点が無視できないような気がします。
今回は倉内 直子・篠田 昌伸・高橋 東悟・法倉 雅紀・清水 篤の各氏の作品の新作初演*1でしたが、個々の感想を少し述べてみます。
- 倉内作品
- 「収束」という題が少しピンときませんでした。確かにストンと落ちがついた終わり方の作品でしたが……。
- 篠田作品
- こういう詩にもちゃんと曲が付くのかとただただ驚いて聴いてました。「音ばかりたてやがっておまえは東武電車か」のくだりは自分にとってはヒットでした。ここは東急や西武ではなく、東武でなくてはこの詩には合いません。京成でもちょっと外れです。
- 高橋作品
- 昨今の世情に対する不安がストレートに出てしまっている作品のように感じました。この作品に表現されているものは確かに多くの人に共有されているのでしょう。右の人も左の人も同じ物を感じているがゆえに、結果として違う方向を向いて走り出してしまう。そんな感じがします。ちなみに、この曲の与える不安感で喘息の発作を起こしかけたことを付記しておきます。それだけの力があったということで。
- 法倉作品
- これで柿本人麻呂シリーズは終わり、ということなのでしょうか。締めを意識した作品のように思います。清水作品極力特殊奏法や難解なフレーズを使わない、というのを課題にしたとのことですが、これが課題になり得るというのはかえって21世紀的な感じがします。氏はグループNEXT主宰の高橋氏よりも若い世代に属するようですが、それが曲にも出ているようです。
全体の構成を意識して各氏の順番を決めたのでしょうか。今回は演奏会としてのまとまりも感じることが出来ました。第4回作品展のときに、「第10回まで行くと良いですね。」と話した記憶があるのですが、次は節目になる第10回です。このような企画を続けるのは難しいことだと思うのですが、10回続けばそれなりに定着したといえるでしょう。期待しております。
*1 篠田作品のみプログラムに初演との記載なし