今日は参議院議員選挙の投票日。自民党惨敗の予測が伝えられる中、今回も敢えて2票とも自民党に投じてまいりました。産経新聞のサイトに出ておりました「【正論】ジェームス・アワー 不可解な日本メディアの安倍批判」にありますように、安倍政権には失政らしい失政もなく、その一方で防衛庁の省昇格、天下り規制法案、教育基本法改正など、歴代内閣が手を付けられなかった懸案を全速力で片付けてきました。身内に甘いという致命的な欠点があるので総理大臣の器としてはどうかと思うものがありますし、思想的にも正統派保守なので付いていけないものもありますが、二大政党の一翼を担うべきまともな中道左派政党*1が存在しなくなった現状では、やはり自民党に票を投ずるしかない、と評価しました。
しかし、マスコミや世論の安倍攻撃のすさまじさは大変なものでした。宇野政権、橋本政権、森政権の時と雰囲気がそっくりです。やっていることは相当まともであるにもかかわらず、です。どうやら安倍さんは何か虎の尻尾を踏んでしまい、何かを怒らせてしまったようです。何を怒らせたのでしょうか。
一番考えられるのは官僚組織を怒らせてしまった可能性でしょう。「依存症の独り言」の板眞さんが7月28日付のエントリー「官僚のクーデタに屈するのか!!!」で、
それもこれも、公務員の天下りの制限に安倍内閣が踏み込んだからだ!!!
既得権益の牙城!!!
キャリア官僚!!!やっぱり虎の尾を踏んでしまったということか!!!
このクーデタと言うべき反動に、安倍内閣はあまりにも甘すぎた。官僚とメディア、この既得権益のかたまりと、反日左翼が連動している!!!
これを許してもよいのか!!!公務員制度改革=天下り—談合—利権の駆逐
これを内閣の一方の旗にする安倍内閣
これの打倒が彼らの共通利益!!!官僚のクーデタを許してはならない!!!
依存症の独り言「官僚のクーデタに屈するのか!!!」より
と述べてますが、全面的に賛成です。官僚主導で「世界で最も成功した社会主義国」として発展してきたわが国ですが、その役目はとうに終えており、今のキャリア官僚は天下り先の確保のみに狂奔し、「省益あって国益なし」を実践するだけの存在に成り果ててしまっております。それだけに、表現こそ激しすぎますが、板眞さんの指摘は正しいものと考えます。
安倍政権が踏んだ虎の尻尾として次に考えられるのは、マスコミ、北朝鮮、中国などですが、北朝鮮などは元々敵側なので、虎の尻尾を踏んだと言うのとはちょっと違うように思えます。また、マスコミの執拗な反安倍キャンペーンは単にスポンサーの意思に忠実なだけのように見えます。ここから先は単なる憶測ですが、つい数年前まで組織力がいまいちだった民主党が今回あれだけ元気に選挙活動が出来たのも、資金力のあるスポンサーがついたからのように思えます。そのスポンサーがどういう存在なのかは、民主党のこの3年間の急激な左傾化から明らかのように思いますが、如何でしょうか。どんな組織もスポンサーの意に添うようにしか行動できないものですし。
また、荒唐無稽な憶測ではありますが、もしかすると安倍政権が本当に踏んだ虎の尻尾はアメリカではなかったかとさえ思ってしまいます。従軍慰安婦問題で安倍さんが示した態度に対する反発の中に、「今まで敗戦の非を認めて土下座していたから、中国の反発を抑えてやっていたんだ。それを敗戦国であることを忘れて手前は悪くなかっただと? そんな生意気を言うようなら……(以下略)*2。」と言うようなものがあったように聞いています。
このようにアメリカの虎の尾を踏んだのでは、と懸念する最大の理由は、安倍政権の旗印の一つである「戦後レジームの総決算」にあります。日本が直近の世界大戦の敗戦国である以上、次の世界大戦で戦勝国側に立つまではその烙印が消えることがないにもかかわらず、安倍さんは正直に自らの目標を出し過ぎた*3ように思います。なんだかんだ言ってもアメリカや中国には戦勝国意識があるので、安倍さんや麻生さんの態度は(正論であることは確かなのですが、むしろそれ故に戦勝国意識を刺激して)寝た子を起こしてしまったのでは、と一抹の不安を感じます。
虎の尾を踏んだのではという話からは離れますが、今回最も印象深かったのは、サンフランシスコ平和条約のときも、日米安保条約のときも、左翼のキャンペーンにもかかわらず最終的には賢明な選択をした国民が、今回はうまうまとマスコミのキャンペーンに乗ってしまったように見えることです。こういう扇動は催眠術と同じで、大衆の潜在的な願望と合致していなければそうそう成功するものではありません。つまり、扇動された方にもそれを望む要素があったことになります。
そんなにわが国の国民は政府に依存して生きて居たいのでしょうか。そんなに(悪平等的という意味で)左翼的な願望を持っているのでしょうか。そんなに何かを引き摺り下ろすことにエンターテインメント的な快感を感じるのでしょうか。前回の郵政選挙と今回の選挙では、引き摺り下ろしたいものが民主党や国民新党から自民党に振り替わっただけのようにしか見えません。
これを書いている時点であと1時間くらいで投票が終了しますが、もし一部マスコミが予測するように自民党が30議席台、などと言う結果が出てきたら、この国の将来は暗いものがあります。社民党にも比肩する左翼政党をあっさりと信任してしまう国に将来はあるとは思えません。
おことわり
すっきりしない気分ですっきりしない頭で書いたためか、どうもごたついていて読みにくい文章なので、2007年8月3日に大幅に改稿いたしました。
*1 まともな中道左派政党: 前原さんが代表だった頃の民主党はその資格があったのですが、今の民主党はどうみても社民党に匹敵する完全な左翼政党です。
*2 (以下略): (以下略)の部分は私には分かりませんが、敢えて憶測すれば以下のようになります。米国の下院議員や政府中枢の一部に「(敗戦国からの脱却を図るからには)さぞかし核兵器を独自開発してアメリカに楯突いて、さらにはアメリカに復讐しようとでも考えているんだろうな。そんなことを許すくらいなら中国におまえらの首根っこを押さえさせてやる。やはり東アジアは中国に管理させよう。」とでも考えた人が居なかったか、不安がよぎります。軍事常識のある人ならそんなことは考えないでしょうが……。
*3 正直に自らの目標を出し過ぎた: 茨の道と分かっていても目標を真っ正直に打ち出すのが安倍さんの良さと言えばその通りなのですが。