民主党政権が自民党政権に比べて反米的な政策をとるのは最初から分かっていたことだが、一般にこれは中国の意向に沿ったものだと思われている。しかし、対中関係を考えてもこれが国益に沿うものとはどうしても思えない。
簡単なモデルで考えてみる。日本、米国、中国の三国の関係を三角形にして表し、相互の関係が良好なら実線、不良なら破線で結ぶことにする。そうすると、ソシオグラムのようなものが出来上がる。
このとき、関係が安定するのは実線で表される辺が奇数の場合と考えられる。具体的には、
- 実線の辺が0のときは、三国が相互に排斥し合っている場合で、三すくみの緊張した状態。
- 一辺のみ実線のときは、二国間同盟があって他の一国に対抗している状態で、これはこれで安定した関係になる。
- 二辺が実線のときは、いわゆる三角関係であり、争いが起きやすい状態。
- 三辺とも実線のときは、すべてが友好的な状態。
このモデルで行くと、日米が非常に緊密な場合、中国としては日米の両方と対立的になって孤立するか、日米の双方とうまくやっていくかの選択を迫られることとなる。一方と対立して他方と仲良くやろうと思っても、そうは問屋が卸さなくなるからである。日本としてはどっちに転んでも悪くない。ここを本能的に分かっていたのが小泉元総理大臣だったと思う。その意味で、田中真紀子元外相更迭後の小泉外交というのは安心して見ていられた。喧嘩の勘所を知っているという点で、安定感があった。
しかし、日米が対立するか、疎遠になるかした場合、中国としては日米の一方と組んで他方と対立し、対立する相手を孤立させるという選択肢が出てくる。その一方で、両方とうまくやっていくということは難しくなる。案件ごとに日米のどちらかを抱き込んで他方と対立することになると思われる。これをやられると集団的自衛権の行使(軍事同盟への参加)を封じられている日本は非常に弱い。
仮にも政権の座にある者がそれを分かっていないはずはないので、どうも中国にフリーハンドを与えるために鳩山政権がわざと反米的な政策を振り回しているような気がしてならない。だから反米リベラルの連中は売国的だと言われてしまうのだろう。
どう考えても、反米的外交は対中外交からみても得策とは思えない。日本にとって益のある対中関係のためには良好な対米関係が必要だ、ということを理解しない政権に支持を与えた日本国民に、果たして未来はあるのだろうか。中国の高笑いが聞こえるような気がするのは空耳ではなかろう。