衆議院議員選挙で小選挙区で落選したものの惜敗率が高く、比例代表で当選した議員に対し、「選挙区の落選させたいという意思が反映されない」とか「ゾンビ」だとか言っていわゆる比例復活は悪いことだ、とする向きが少なからずあるようだ。そんなに比例復活って悪いことなのだろうか。
比例復活した議員は比例区選出の議員なのであり、比例区は政党に対する投票であるのだから、誰がその政党から選出されるのかという事柄も政党に委任されていると考えるべきであり、その政党が誰を当選させようとその政党の自由だと考える。全員を同一順位にして惜敗率だけで当選者を決める、したがって比例区選出の議員は全員が比例復活である、という政党があったとしても問題はないはずである。
また、同一選挙区から2~3人が当選する選挙区が出るのはおかしいという意見もあろうかと思うが、憲法上は当選者は地域代表ではなく、国家全体の代表なのであるから、これも問題にはならない。
現実に比例復活にはメリットがある。第一に、小選挙区制一本では切り捨てられそうな小政党であっても、同一ブロックのすべての選挙区の薄い支持をかき集めて当選できることである。国民民主党や大阪以外の維新の会に良くあてはまる。消えてしまうには惜しい中小政党の救済にはもってこいの制度だと考える。共産党にまで効果が及ぶのは嫌な感じだが、一定の支持率があるから止むを得ない。
第二に、競り合っている候補の両方とも当選させたい場合に有効である。立憲民主党にも消えるには惜しい候補は居るし、自民党にも言えることである。それが同じ選挙区が地盤というだけで片方に投じられた票が死に票になるというのは勿体ない気がする。支持政党の候補ではないが、消えて欲しくはない負けそうな他党の候補に敢えて投票して惜敗率を上げる、という戦略的投票が出来る。それで他の選挙区の他党の落選して欲しい候補が惜敗率の不足で落選してくれればさらに良し、ということになる。
ちなみに、ドイツのかつての名物外相が小選挙区で一度も勝ったことがなく、常に比例区からの当選だったと聞いている。日本では重要閣僚が小選挙区で落選し比例復活で救われて国家的損失を免れる、という事態がほとんど起きないのでこの制度の有難みをあまり実感できないが、理論的には有り得る話である。
以上のような理由で比例復活には一定の効用があると考える。