米国における超富裕層への富の集中は想像を絶するものがあるようで、上位1%の富裕層が20%の富を独占しているとされている。これに対し、日本では貧困層がさらに貧困化することが格差の拡大に寄与しているといわれる。そして、ジニ係数ではこの両者は区別できない。
モデルとして、両極端な二つのモデルを考えてみる。
- モデル1:100人のうち一人だけが全所得の20%を独占する。残り80%の所得は残り99人に平等に分配される。
- モデル2:100人のうち下位20人は全所得の1%しか分け与えられない。残りの99%の所得は残り80人で山分けにされる。
表にすると以下の状態になる。
下位からの順位 | モデル1 | モデル2 |
1 | 6,400 | 396 |
(中略) | … | … |
20 | 6,400 | 396 |
21 | 6,400 | 9,801 |
(中略) | … | … |
(中央値) | 6,400 | 9,801 |
(中略) | … | … |
99 | 6,400 | 9,801 |
100 | 158,400 | 9,801 |
総計 | 792,000 | 792,000 |
どちらのモデルでもジニ係数は同じになるはずである。
モデル1は上位者への一極集中、モデル2は下位者の脱落による格差拡大を念頭に置いてそれを極端な形にしたものであるが、「上位1%が20%の富を独占する社会」よりも「下位20%が1%の富しか得られない社会」の方がどう考えてもきつい。一度落ちこぼれたら立ち上がれず、集団として二極分解してしまうから社会の一体感も損なわれる。イメージとしては自民党と共産党しかいなくなっていく社会である。
モデル2のような社会では上位者が多数だから少数の下位者に冷たくなるであろうし、ノーブレス=オブリージュの考え方や寄付の文化も育たないであろう。このことをもって「日本人は冷たい」と言われるのも、日本が上位に富が集中するのでなく、下位が落ちこぼれることで格差が拡大する社会になっていることと関係があるような気がしてきた。
追記1
ちなみに、相対貧困率に利いてくるのはモデル2のような下位者がさらに貧しくなる形の格差拡大である。モデル1の場合、中央値が6,400であるから相対貧困率はゼロ、モデル2では中央値が9,801になるので相対貧困率は20%になる。なお、どちらのモデルでも算術平均は7,920である。
追記2
モデル1は「富豪と平民しかいない社会」、モデル2は「平民と貧民しかいない社会」であって、現実の米国とも日本とも異なるものである。しかし、富豪が形成されることよりも貧民が形成されることの方がきついと感じる理由を提示したくてこのような非現実的なモデルを提示した。
ちなみに、これが私がホリエモンバッシングに関心を持たない理由でもある。富豪になった彼が5億円稼ごうと、50億円稼ごうと私にとってはどうでも良いことだからである。