消費税率は現在の8%が限度ではないかと思う理由

  • GDPが一定の時、消費税を1%上げると何%税収が増えるのか。
  • 消費税を1%上げると何%GDPが下落するのか。
  • 消費税を1%上げるために必要なコストは消費税の何%分なのか。
  • これらを清算した結果、消費税を1%上げると政府債務はどうなるのか。

という点について試算したところ、消費税を上げても上げなくても大差ないという結果が出るという話を某所で見かけた。本当だろうか。ちょっと粗っぽく見積もってみる。

現在のGDPは500兆円くらい。政府の債務は1000兆円くらい。消費税1%はGDPの0.5%、2.5兆円くらいである。消費税の1%上げによるGDPの弾性値が分からないが、今回の3%上げで第2四半期のGDP成長率が年率換算で-1.6%になったというから、消費税1%の上げでGDPは-0.5~-1%変化すると仮定する。また、増加するはずの税収の半分を公共事業や社会福祉に使うとする。

消費税を2%上げることで財務省が期待する増収効果は5兆円くらいだろう。しかし、GDPが2.5兆円~5兆円収縮するので1.25兆円から2.5兆円の減収になって実際の増収は2.5兆円から3.75兆円の増加にとどまる。景気対策で2.5兆円使ったら財務省の手元には0兆円から1.25兆円しか残らない。

この増収分を返済原資にしても、政府債務は998.75兆円~1000兆円にしか減らない。一方、2.5兆円の景気対策込みでGDPは497.5兆円~500兆円に減っている。その結果、政府債務のGDP比は199.75%~201.01%になる。……あれ? 消費税を2%上げたのでは大差ないか、わずかに事態が悪化することになってしまう。

実際の経済はこの計算の通りにならないであろうが、消費税率が上がれば上がるほどGDPに対する負の効果が大きくなってくるであろうから、安倍内閣が消費税再増税を延期したのもやむを得ない判断だったような気がする。

どんな国であっても、消費税率が景気に与える悪影響と増収効果が平衡してそれ以上増税が出来なくなる税率というのを考えることができる。日本の場合はどうやらそれが今回の8%という税率だったようで、諸外国に比べて余りの低さに驚く。

実際、消費税再増税延期が確定的になった際にも長期金利はほとんど反応しなかったようで、再増税延期の決定は中立的だという仮説もあながち間違いではなかったようだ。8%から10%への変更なら増税してもしなくても大差ないか若干のマイナス。10%を超える税率にするのは悪影響の方が明らかに大きくなる。今までは消費税を15%にしてでも防衛費を増額すべきだと考えていたが、どうやら宗旨替えしなくてはいけないようだ。

8%という世界的には低い税率で行き詰った日本の消費税。今後の税収は何に頼ればよいのだろうか。防衛費をNATO諸国並みのGDP比2%に増やして欲しいのに、その財源の見通しは立ちそうにない。