小泉首相の靖国神社参拝を是とします

昨日(2006年8月15日)、小泉首相は靖国神社を参拝したわけですが、予想した通り、読売新聞などのマスメディアは反対論一色のように見受けられます。しかし、マスコミが何と言おうとも、8月15日に靖国神社を参拝した首相の判断を是としたいと思います。

今年は首相の靖国神社参拝を牽制するかのような絶妙なタイミングで「富田メモ」なるものが日本経済新聞によりスクープされるなど、異様な雰囲気が醸成されていました。このメモの内容自体は、これまでに宮内庁筋からリークされていた話ともよく一致しており、目新しいことなどは一つも無いと言っても良いものでした。「どこかで聞いたような話だな。なぜ今頃になって?」というのが正直な感想でした。

むしろ、その後の展開の方が驚くべきものでした。普段皇室廃止論を唱えているような左翼主義者が「昭和天皇の大御心」なるものにこぞって感服したような態度を示し、世論調査の結果まで大きく「小泉首相の靖国神社参拝反対」と「A級戦犯分祀賛成」に傾いてしまったのは記憶に新しいところです。

しかし、私にはメモの内容なんかよりも、こちらの方がショックでした。日本は立憲君主国としては最も厳格に統治行為と(天皇の有する)権威が分離されている国であり、天皇の発言や思想信条の政治利用は厳密に禁忌であると信じておりました。ところが、今回のメモの政治利用の露骨さと、その効果の大きさ、そして左翼の便乗振りと右翼の動揺を見ますと、日本では憲政の常道と言うものが機能しないのか、そして日本には自分でものを考えて行動する真の自由主義者(リベラリスト)は存在しないのか、と暗澹たる思いに捕らわれてしまいました。

その意味で、小泉首相が「内心の自由の問題だ。」と言い切ったことは極めて心強く感じられました。小泉首相の論は正論であり、自由主義者の面目躍如、と感じられて心強く感じた次第であります。

そして、この「富田メモ」のスクープは小泉首相の靖国神社参拝を阻止したい勢力にとっては逆効果となるものでした。(真偽はどうであったとしても)「昭和天皇の大御心」なるものによって政治が動かされることは無く、日本国憲法第19条*1が機能していることを示し、如何なる外圧も無効であることを示し、日本が民主主義国家であることを示すためには、小泉首相が靖国神社を8月15日に参拝することが必要となってしまったからです。

しかし、韓国はともかく、中国がこのことに気付かないとは思えません。実利に異常に聡い中国人のことです。小泉首相が靖国神社を8月15日に参拝することは当の昔に織り込み済みだったことでしょう。参拝を阻止できれば日本をリモートコントロールする足掛かりになるし、参拝を阻止できなくとも中国内の反日感情を煽って体制の維持に役立てることが出来ます。「(日本に対する) 歴史問題は終始強調し、永遠に語らなくてはならない」という江沢民の方針には(中国からみて)実利があったからこそ、あれだけ執拗に日本を攻めてきたわけです。

ここで靖国問題で譲ったとしても、中国が国内向けに「反日」を必要とし、自らの体制の利益に忠実であり、日本国内に中共の動きに呼応してくれる親中・媚中勢力があって日本をリモートコントロールできる限り、第二・第三の問題をこしらえては波状攻撃を掛けてくるのは明らかです。

中国にとっての最大の制約条件がエネルギーの確保であり、中国の最大の目標がエネルギー確保のために一方でランドパワーとして中央アジアで覇を唱え、他方でシーパワーとして第二列島線まで勢力下に収めることである以上、中国と日米はロシアに対抗する味方同士ではなく、覇権を争う敵陣営同士に変化したのは必然の変化です。そして、日米の両方を同時に敵に回すようなことを老獪な中国がするはずが無く、中国は日米離間を図りながらひたすら日本を叩く、と言うことになります。その上、叩けば叩くほど財界や親中派が利益を提供してくれたのですから中国にとって反日ほど美味しいビジネスは無かったわけです。

しかし、小泉政権下では様相が違ってきました。最初の2年間は慎重な対中姿勢でしたが、その後はずいぶんと変化してきています。現在の日中関係を良くないとする向きがずいぶん多いようですが、敵対している国家間の関係としては小泉政権下での状況は決して悪くありません。靖国問題でやり合っている限り、感情的にはともかく、実質的な損害は両国ともにゼロです。表面的な突っ張り合いで五分と五分なら平和的とさえ言えるでしょう。もし台湾の領有権、尖閣諸島の領有権、沖縄の米軍基地の存在といったものが争点になった場合には、本物の戦争を覚悟しなくてはなりません。

靖国問題に限って言えば、日本としては「靖国問題は国内問題で中国には関係ありません。」という態度で中国の要求を突っぱねていればそれで十分であり、(首相が参拝するにしてもしないにしても)平然としていれば良いだけのことではないのでしょうか? 現状が日中両国にとってそう悪いとは思えないのです。逆に言うと、靖国問題以外の火急の懸案が今のところ日中両国にないからこそ、中国も日本と首脳会談をしない、と突っ張っていられるような気がします。

軍備増強に余念がない中国ですが、靖国以外で日本を攻めてきたときが本当の正念場になるように思います。


*1 日本国憲法第19条:思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。