単純小選挙区制に懐疑的な理由

現在は衆議院も参議院も基本的には小選挙区制と比例代表制を組み合わせた選挙制度になっているが、これを単純小選挙区制にしようと言う考え方がある。しかし、それは果たして良いことなのだろうか、大いに疑問を感じるところである。その理由であるが、

現状の二大政党のあり方、さらには二大政党制そのものに疑問を感じる
従来は小泉外交を支持すれば新保守主義が付いてくる、労働者の保護を求めると媚中主義が付いてくると言った感じで、民主党の前原氏のような立場や考え方をとる者にとっては受け皿がない状態であった。これと言うのも、かつての民主党が何でも自民党の逆を行こうとしたからである。私見を述べれば、「外交と防衛は自民党と同じでいい。」と言い切った前原氏は二大政党制と言うものを良く分かっていて非常に好感が持てるし、民主党にもその方向で進んで欲しい。しかし、それで社民党や共産党が存在できなくなったのでは、投票のしようが無くなる人もいるだろう。内政と外交・防衛問題で対立軸が2軸あることを考慮して、政党の数も4つは欲しいと思う。大政党2個に小政党2個くらいが理想的である。
小選挙区で国替えがないと、政界再編が起こりにくくなる
同じ選挙区に自民党候補がいるというだけの理由で民主党に所属している候補者も多いはずである。逆も然りである。このために自民党も民主党も思想的にごった煮状態になってしまって、有権者としては非常に投票しにくい。この意味で、先の総選挙で自民党が取った戦術は非常に興味深い。いわゆる「落下傘候補」が常態になれば、地盤の競合を考慮することなく政界再編を起こしうるようになるだろう。民主党の選挙互助会状態も解消の方向に向かって欲しいものである。
小選挙区の地盤が強すぎると、国益を損なう人物が当選し続ける
これは説明の必要がないだろう。私から見れば、山形3区の某氏とか、神奈川17区の某氏とか……。
重要閣僚が小選挙区で当選できないと国益を損なう
町村前外相も選挙区では万全ではなかったと言う。国益の如何よりも地元の代表を選ぶ、というのは国政選挙としては如何なものかと思う。

以上のようなわけで、単純小選挙区制にも二大政党制にも、現状のままでは余り賛成できない。それでも単純小選挙区制と二大政党制を推進するのなら、候補者を選挙区ごとに固定しないこと、そして民主党が前原代表の目指す方向性で固まることが条件になると思う。民主党が「何でも反対党」になっては困るのだ。そして、外交と防衛は政権交代によってぶれてはいけない。繰り返すようだが、この点で前原代表は二大政党制と言うものを良く分かっていると思う。

ちなみに、「マーケットの馬車馬」さんの11月19日付のエントリー「民主党の最適戦略(上)」において、二大政党制のもとでは両政党に僅かな差しかなくなっていく理由をモデル化して説明しており、非常に分かりやすい記事となっている。このモデルによって、民主党の岡田前代表の失敗は党が左傾化しすぎたことによるものであることが良く説明できる。

追記(12/21/2005)

単純小選挙区制と二大政党制にも大きなメリットがあるのに気が付いた。公明党の勢力を大きく削ぐことが出来るのは魅力的である。