人権擁護法案について

ネット界では反対意見の強い同法案ですが、現在の日本に(今回の内容で良いかどうかは別として)このような法律が必要かどうかという点から見れば、私は必要性はあると考えます。事実、日本にも人種差別を理由としたヘイトスクラムは日常的に存在しますし、日本人の人権意識が特に高いとは思いません。そして、日本人の大多数には人種差別が犯罪である(べき)との認識もないでしょう。現行法では、人種差別的言動それ自体は犯罪行為にならないようです。このような状態ですから、この法律で擁護されるべき対象というのは日本にも存在しますし、現行法だけでは足りずに新しい法律を作ることそれ自体の必要性については異論はありません。

ですから、問題はその内容、ということになります。法律の本文そのものを見る限り、類似の法律に比べて特に酷いと言うわけでもなさそうです。人権委員の人選も人権擁護委員の人選も(某団体がいくら騒いでも)おそらく常識の範囲内の毒にも薬にもならないものに落ち着くでしょう。某団体がいくら息巻いても、人権委員会がそんなに大きな権限を振るえるというものでもないようです。その辺の評価についてはbewaad institute@kasumigasekiの3月13日から同月15日付のエントリーが参考になります。

それではお前は今の人権擁護法案(自民党案)に賛成なのか、と言われるとそういうわけではありません。雑な法案であることには間違いないですし、慎重さに欠ける法案なのも確かです。問題の性質上人権委員から外国人を完全排除するのは好ましくないとしても全体の20%未満に制限するとか、同一団体に所属した経験のある者は複数任命できないようにするとか、歯止めは設けるべきだと考えます。法案自体はあっても構わないが、このままでは賛成できない、といったところです。

ところで、何故あんなに反対論が盛り上がっているのでしょうか。私から見る限り、「政府(行政府)が信用できないから」、この一点に尽きるような気がします。実際には不可能であり普通ならありえないような恣意的な法律の運用を政府がするという危惧を持っているから、相当数の人が必死になって反対しているのです。

その危惧を具体的に言えば、「自国の防衛に無関心なくせに圧力団体に利益供与するのに熱心で、不自然なまでに中国や韓国に媚びへつらい、国益よりも私益や省益、特定団体の利益の実現に奔走するような政府ならば、自国民を圧迫しても平気に違いない、だから政府は信用できない。」ということで、そのような疑念が根底にあったからこそ、反対論者によってあれだけ容易に議論に火がついた、ということだと思います。問題は人権擁護法案の中にではなくその外側にある、すなわち政治家や官僚のあり方が信用されていない、ということにあるのではないかと思いました。言い換えれば、国益追求と自国民保護に冷淡だったことのつけが回っているのでは、と思います。