学生時代、清瀬にある結核研究所に実習に行ったときのことでした。研修に来ていたインド人の医師に、
「商店で買い物したら、そこの小母さんが洗濯石鹸と浴用石鹸の区別を英語で聞き取れなかった。日本人にはそのくらい英語が出来ない人が多いが、それが羨ましい。」
と言われました。
その理由を聞いたら、
「インドは英国の植民地だったから、何でも英語で直接入ってきてしまう。思想的なことも、商業的なことも。日本人は市井の人が英語が出来ないから民族的に自立できたのかも。」
とのことです。
なるほど、と思いましたので、
「確かに日本では翻訳の需要が多くて、何でも日本語に翻訳してから一般に広まるのは確かです。」
と答えたら、もう一度羨ましがられました。
日本人が何時までも日本人なのは、孤立した言語である日本語に守られているからなのかもしれません。