小倉秀夫の「IT法のTop Front」:2004年11月8日にて小倉弁護士が落合弁護士の提案に答える形で意見を述べておられますが、後半3つの段落については完全に私もそう思います。特に、
匿名性は必ずしも保障されておらず、したがって、違法行為に悪用した場合には悪用した人間が責任を取らされるリスクを負うのだということを積極的にアピールすることによって、違法行為に悪用しようという気持ちを抑制するというのは、経営方針としては、そんなに否定されることではないように思います。
情報通信事業者は利用者の氏名・住所等の個人情報を把握すべきではなく、できる限り匿名性を保障すべきであるというのは、本筋としてはおかしいのではないかと思います。
情報通信産業の未来を考えたときには、利用者の氏名・住所などの情報を管理することを皆が回避し、情報通信サービスを悪用した者を追跡することが困難な状況が続いた場合、プリペイド携帯がおかれているような逆風に、他の情報通信産業も置かれることになるのではないかと私は逆に危惧してしまいます。
小倉秀夫「IT法のTop Front」より
という部分については全くその通りでしょう。
現状のダイアリー(はてなに限ったことではない)あるいは匿名掲示板の状況は匿名性の保証が行き過ぎていて、かえっておかしいと強く思います。このままリアル社会から遊離し続けて、小倉弁護士の危惧の通りになって、匿名文化そのものがプリペイド携帯並みに悪者扱いされる日が来なければいいのですが。
その意味で、はてなの掲げる健全化という理由にも60%以上の理はあって、はてなの方針はそんなに不当ではないと思います。そして、今回のような住所登録の要求という事を起こすのに、60%も理があれば、それで十分だと思います。より円滑な実施のための住所登録義務化の延期には納得しますが、はてなが住所登録を撤回するようなことが無いように願っています>id:hatenadiaryさま。これで匿名主義者に屈するような形で住所登録が撤回されたら、正直にいち早く登録したものが馬鹿だということになり、後に残るのは荒涼とした無法地帯になるような気がします。
追記1
馬鹿言いたいから匿名性を保持して欲しい、という意見を良く見かけますが、実名で馬鹿が言える方がもっと良いのは確かですし、実際に実名で痕−きずあと−のようなゲームの話もしてしまうのも、そういう考えによるものです。
追記2
一番見ていて悲しくなる意見は、「はてなが住所登録を撤回しないのは銀行から融資を受ける条件に個人情報の収集があるからだ」、「住所氏名と連動することで自動化された思想調査、さらには思想統制が可能になる」、「住所氏名付きのダイアリーを丸ごと売り渡し、フィールドワークの材料にさせるつもり」といった言説です。このような意見に接すると、住所登録に意義を認めて賛成している自分の意見は何だったのか、と暗澹たる思いにとらわれます。
このような意見を流布する者の狙いは、はてなに絶望して辞めたくなる人が増えることにあり、それこそがid:TomCat氏があちこちで仰っている「ネガティブキャンペーンが始まった」ということなのでしょうか。住所登録にまつわる他のユーザーの意見を拝見するほどに、意地になってはてなと住所登録にこだわる気持ちと、ネガティブな言辞の大合唱が起きるはてなから目を背けてしまいたい気持ちの両方が強くなってきます。
追記3
住所登録問題そのものよりも、それに対するユーザーの反応に対して受けた衝撃は決して小さくありません。そんなに匿名性の繭から出たくないのでしょうか。
全ての言辞には責任がついて回るのを当然として、時には馬鹿を言って、時々は真面目な話をする、そういう当たり前のことを匿名性の繭の外でしていこうと思う人がもっと出て欲しいと強く思います。