生活習慣病という言葉自体、行政が作った言葉で、平成8年に当時の厚生省が「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」として定義したものです。生活習慣の関与の程度は問われていないので、少しでも関与していれば生活習慣病といって良いことになります。
しかし、遺伝的な負荷が強ければ仙人みたいな生活をしていても高脂血症や糖尿病になりますし、どんなに無茶をしてBMIが35というようなかなりの肥満になっても何も起こさない人も居ます。
また、同じ病気でも、性別によって生活習慣病である度合いが違うものもあります。その好例が高コレステロール血症です。
次の表を見てください。2003年に私の勤務するクリニックの総合健診を受診した方で、LDLコレステロールが160mg/dlを越えた人の割合を年齢別に示したものです。
年齢階級 | 男性 | 女性 |
30-34歳 | 8% | 2% |
35-39歳 | 10% | 4% |
40-44歳 | 13% | 5% |
45-49歳 | 13% | 8% |
50-54歳 | 14% | 25% |
55-59歳 | 15% | 25% |
60-64歳 | 12% | 35% |
男性の場合は50代を頂点とする緩やかなピークを示すので、現役世代を中心とする生活習慣の影響が主体と思われ、まあ生活習慣病の代表格というのも納得できます。しかし、女性の場合は更年期で一段と増え、さらに加齢とともにどんどん上がっていきます。女の年寄りがそんなに男の年寄りに比べて生活習慣が悪いはずはありません。女性ホルモンの減少を背景とした、加齢による病気と考えるべきです。また、このことは昔から知られていたことです。
性差や遺伝的な条件の差を無視して、なんでもかんでも生活習慣病と言えば良いというものではない好例がここにあります。