HP200LXというコンピュータをご存知でしょうか?6年程前に発売され、新製品ラッシュが常識のこの世界において、なんと5年にわたって基本仕様に変更を加えることなく生産されつづけた(注:転載時にはすでに生産中止)パームトップコンピュータです。あのカシオペアにも満たないサイズでありながら、その仕様は一人前のPC-XT互換機でした。
具体的には、80186互換CPU+CGA解像度の液晶画面+PCカードスロット+メモリ1~4MB(改造で32MBも可)+ROMバージョンのMS-DOS5.0という構成です。DOS/VのCGA版のような発想で日本語化(DOS/Cとも言われる)すれば、V-TEXT対応ソフトであれば、DOS/Vの資産が生かせるため、パワーユーザーには評価の高い機械です。小さいながらも汎用性を持った完全体のMS-DOSマシンであり、ウィンドウズCEマシンのようなお仕着せがなく、自由に使えるのが魅力でした。
このマシンの魅力については既に多くの人が語っていますが、
- 小さいながらも完全なMS-DOSマシンとしての汎用性
- 電子手帳要らずの内蔵ソフト
- FHPPCを中心に活動するアクティブユーザーの貢献
- 高級電卓で有名な会社の製品らしい便利な電卓機能
- 小さい筐体のわりに拡張性が保たれている
といったところに要約されます。
汎用性と拡張性を持ったPCでもあるからこそ売れつづけたのであり、PCの良さがロングランの人気を支えつづけたと言えます。とかくPDAというと汎用性を奪い去ってお仕着せのプログラムしか使えないようなイメージがありますし、情報家電も汎用性を制限して単一機能化する方向へ行くようですが、そうしたものは飽きられるのも早いのです。確かに汎用のPCは抽象的な操作体系を強いて使いにくいように見えますが、いざ自家薬籠中のものにしてしまいますと、どんな形のものに化けるか見当がつかない可能性を秘めています。HP200LXのユーザーが100人いれば、100通りの200LXが出来るといわれていますが、この多様性がPCの本質だと思います。
このちっぽけなPCが教えてくれたPCを使う事の本質を忘れたくないものです。企業ベースの市場では売れるためのとっつきやすさが優先されるでしょうが、HP200LXの良さを受け継いだ、MS-DOSやLINUXが走る386あるいは486ベースのパームトップが出ないものかと思います。