ウィンドウズ2000でA5完全版
イレギュラーな遊び方の実験
はじめに
従来、3D必須のゲームはNTとの相性は最悪でした。ダイレクトX3対応が精一杯という時期が長く続き、ダイレクトX5、あるいは6.1への対応をアングラツールに頼らざるを得ない状況が長く続いたからです。しかし、NT対応ゲームであるルナティックドーン4ではダイレクトX7を同梱するなど、NTでもダイレクトX必須のゲームができる状況が整いつつある状況でした。
そんな中、マイクロソフトがウィンドウズNT5.0をウィンドウズ2000として発売しました。紆余曲折はありましたが、ウィンドウズ98の操作性も受け継ぎ、ウィンドウズ98の後継OSにもなり得るとマイクロソフトは宣伝しています。ウィンドウズ98の使いやすさとウィンドウズNTの安定性を兼ね備えたとマイクロソフトでは言っているのですが、果たして、A5完全版はこのOSで動くのでしょうか。
ウィンドウズ2000の変更点を列挙すると、ダイレクトX7、USB、ゲームパッド、ジョイスティックのサポート(予定のものもあり)など、NTでもゲームをやってくださいと言わんばかりの変更点が目白押しです。NT仕様であるウィンドウズ2000のもとでもしA5完全版が動けば、A5完全版をより長く楽しめますし、OSとしての堅牢さではNTの方が上なだけに、早期にウィンドウズ98に見切りをつけてウィンドウズ2000に移行できるかもしれません。
そこで、本稿ではNT仕様であるウィンドウズ2000のもとで本来非対応であるA5完全版を動かす実験について解説します。
なお、読者の環境でこれを試してどのような結果になろうと保証はしませんし、責任もとれません。ご注意ください。本稿は同じような実験をお考えの方にヒントを差し上げる目的で出したもので、NTでのA5完全版の動作について、筆者、製造元(アートディンク社)、マイクロソフト社の何れにも問い合わせるようなことはしないでください。
おことわり
※執筆時点ではA5完全版(含むエターナル)はウィンドウズ2000には対応していなかったのですが、2001年3月に発売のA列車で行こうメモリアルパックに収載のA5完全版エターナルはウィンドウズ2000に対応しています。実験ネタとしての観点から記事は残しておりますが、ウィンドウズ2000ユーザーが普通にプレイなさるのでしたら、メモリアルパックを購入されることをお勧めいたします。
概要
実験は2通り行いました。
最初の実験(実験1)は、ウィンドウズ98と別パーティションにウィンドウズ2000をクリーンインストールし、デュアルブートの環境で行いました。従って、ファイルシステムはFAT32のままです。A5完全版のセットアップと実際のプレイがそのままで可能かどうか、そのままで使えない場合、ウィンドウズ NT4.0付属のSetwin95.cmdとImagecfg.exeを使えば動くようになるかどうかを確かめる実験です。
次の実験(実験2)は、ウィンドウズ2000をNTFS5にクリーンインストールした環境で行いました。ファイルシステムはNTFS5です。ウィンドウズ4.0のツールを使わず、ウィンドウズ2000付属のツールだけで動くようにできないかを確かめる実験です。
実験に供したPCの機器構成
- マザーボード:ABIT BH6
- CPU:Pentium3 450MHz×1
- メインメモリ:256MB
- グラフィックカード:MilleniumG400 DH
- ドライブC、ドライブDはSCSI接続のハードディスク
- ドライブEはMOドライブ
- ドライブFは東芝製40倍速CD-ROMドライブ
- ドライブGは松下製8倍速CD-Rドライブ
実験1の経過
- ウィンドウズ2000からのA5完全版のインストールは、「NTには対応していません」のメッセージのもと、あえなく却下されてしまいました。
- ウィンドウズ2000がNTとして認識されていることが分かりますので、Setwin95.cmdとImagecfg.exeを使ったパッチ当てに挑戦です。このツールはNT4.0のDISK2にあるものです。パッチを当てたいプログラムと同じフォルダにこのツールを置き、そのフォルダに移動、コマンドプロンプトからsetwin95.cmd setup.exeのように打ちます。なお、setup.exeの読みとり専用属性は解除しておかないといけません。パッチ当ての作業そのものはあっけなく終了しました。
- もう一度セットアップを起動しました。最初の1回は何故かエラーになりましたが、2度目は起動できました。インストールは通常通り終了しました。このとき、フォルダをルートディレクトリのすぐ下に置いてないとセットアップがファイルを見つけられません。
- A5完全版をスタートメニューより立ち上げようとしましたが、「ウィンドウズ95専用です」と怒られてしまいます。
- 仕方がないので、A5j.exeに対してのSetwin95.cmdとImagecfg.exeを使ったパッチ当てもすることにします。これも無事終了しました。
- 今度はスタートボタンからA5完全版を普通通りに起動できます。先ほどと同様に、何故か1回目の起動はエラーになりますが、もう一度起動すれば起動できます。
- 動作は、ウィンドウズ98でプレイしていたときよりやや遅い感じです。それでもまあまあプレイできるようです。下に、その時の画面をキャプチャーしたものを示します。ウィンドウズ2000のデスクトップはウィンドウズ98そっくりですので、違いは分からないと思います。なお、オプショナルツアーもOKでした。
実験2の経過
- ウィンドウズ2000プロフェッショナルのCDにSUPPORTというフォルダがあります。このフォルダの中にTOOLSと言うフォルダがあります。管理者権限でログオンし、ここにあるSETUP.EXEを起動します。Windows 2000 Support Toolsがインストールされます。
- このツールの中に、Application Compatibility Toolというツールがあります。これを起動すると、図2のようなウィンドウが開きます。このツールは英語版です。
- A5完全版のCDを挿入し、上のウィンドウでinitialフォルダの中のsetup.exeを指定し、ラジオボタンはウィンドウズ98を指定してみます。
- MSVCRT.dll for win32はwin32sとは互換性がないから駄目だ、みたいなことを言ってくるウィンドウが出てきてA5完全版のセットアップが起動しません。筆者の環境では\WINNT\system32\にあるMSVCRT.dllのバージョンは6.1.8637.0でした。
- ウィンドウズ2000のセットアップCDを取り出し、別の場所(\I386\WIN9XUPG\)にあるMSVCRT.dll(バージョン番号 4.20.0.6201)ではどうなのかを試そうとしましたが、ウィンドウズがこのプログラムを使用中なので駄目と言われ、上書きはおろか、リネームも消すこともできません。この点、ウィンドウズ98なんかより堅固にできています。
- 最後の手段、回復コンソールで無理矢理MSVCRT.dllを入れ替えしました。システムを再起動します。
- 今度はApplication Compatibility Toolを使えば、普通にA5完全版のセットアップが始まります。インストールが済んだところでハングアップしたかのように停止してしまいますが、タスクバー上でApplication compatibility Toolを閉じればインストールは正常終了します。
- インストールされたA5j.exeに対してもApplication Compatibility Toolは有効です。チェックボックスの設定を永久化するオプションをチェックして起動すれば、次回からはこのツールが不要になります。一見これでめでたくインストール成功に見えたのですが…。
- MSVCRT.dllのバージョンダウンが問題ですが、私の環境ではこれで支障が出たのはフロントページだけでした。エントリ何某がない、と怒られてしまいます。しかし、フロントページが起動できるようにMSVCRT.dll のバージョンを上げると、今度はA5完全版が起動できません。
考察
結局、プログラム本体にパッチを当てないとNT仕様であるウィンドウズ2000では完全版はインストールもプレイもできませんでした。
パッチ当てのツールをNT4.0から持ってきた場合(Setwin95.cmdとImagecfg.exe)、最初の起動でエラーが出ますが、2回目からは制約も特にないようです。今のところ障害も出ていません。しかし、NT4.0を持っていないとツールが手に入らないのが難点です。
一方、ウィンドウズ2000付属のツールを使った場合(Application Compatibility Tool)、MSVCRT.dllを入れ替えると言うリスクを伴う作業が必要なようです。回復コンソールという最終兵器を使うのはお世辞にも安全な作業とは言えません。また、これにより動かなくなるプログラムも出てきます(筆者の環境ではフロントページと共存できない)ので、この点でもリスキーです。
こうした行為は本来無保証です。こうしたリスクがあるため、実験のネタとしては面白いのですが、人に勧められるようなものではありません。
しかし、私自身の選択としては、あえて今回の実験を元にウィンドウズ2000への完全移行に踏み切りました。OSとしての動作はNT系列のOSの方が安定しており、最低限度(!)のセキュリティーも備えているからです。今までUSB、ダイレクトX、マルチモニタサポートが難点でウィンドウズ98をやむなく使っていたのですが、ウィンドウズ2000でこれらがサポートされ周辺機器のドライバもようやく整備されてきたため、移行への条件が整ってきたと判断しました。
以上、まだまだ問題はありますが、NT系列のOSでもダイレクトX必須のゲームが動く条件が整ってきたことは実感できました。
こんなイレギュラーな遊び方の記事を出した者が言うのは何ですが、是非PC版A6はウィンドウズ98と2000の両対応で出してください。パッチ当てのようなリスクを伴う作業をしなくても遊べるようにお願いします。ついでにOpenGL対応ならもっとうれしいです。>アートディンクさん
なお、ウィンドウズ版のA4は、こんな小細工いっさいなしで快適にプレイできたことを申し添えておきます。